シフト表を作るとき、最初に開くべきものは空のカレンダーではありません。 先に必要なのは、「いつ、何人、どの役割が必要か」を書いた必要人数表と、「誰が、いつ、何を担当できるか」を書いた希望一覧です。
この2つを作らずに人名から埋めると、最後に人数不足が見つかり、完成した日の配置まで動かすことになります。 必要人数と候補者を枠ごとに比べれば、どこから決めるべきかが見えます。
記事内の表と文面を使うと、次の4つを作れます。
- 時間帯ごとの必要人数表
- スタッフの希望一覧
- 不足しやすい枠から組んだシフト表
- 公開前チェックリストと変更履歴
紙、Excel、スプレッドシート、シフト管理ツールのどれを使っていても、作る順番は同じです。
シフト表が完成するまでの7ステップ
最初に全体の流れを確認します。
| ステップ | 作業 | できあがるもの |
|---|---|---|
| 1 | 対象期間と作成単位を決める | 作成日程 |
| 2 | 時間帯ごとの必要人数を決める | 必要人数表 |
| 3 | 希望を同じ形式で集める | 希望シフト |
| 4 | 希望を枠ごとの候補者へ変換する | 候補一覧 |
| 5 | 候補の余裕がない枠から割り当てる | 仮シフト |
| 6 | 人数、役割、負担、法令、人件費を確認する | 公開できるシフト表 |
| 7 | 最新版と変更方法をスタッフへ伝える | 公開連絡と変更履歴 |
この順番なら、作成中に考えることは常に1つです。 「人をどこへ入れるか」を考えるのは、必要人数と候補者がそろったステップ5からです。
ステップ1:対象期間と作成単位を決める
最初に、何日分を、どの細かさで作るか決めます。
作成単位は細かいほど良いわけではありません。 来店状況と必要人数がランチとディナーで変わる店なら「ランチ、アイドルタイム、ディナー」で分ければ足ります。 1時間ごとに必要人数が変わる店は、30分または1時間単位で作ります。
必要人数が変わらない時間を細かく分割すると、表が大きくなり、確認する枠だけが増えます。 店舗の人員配置が変わる境目に合わせて区切ってください。
作成日程は、公開日から逆算します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象期間 | 8月1日から8月15日 |
| 希望提出の締切 | 7月20日21時 |
| 不足枠の調整日 | 7月21日から23日 |
| シフト公開日 | 7月25日 |
| 変更の連絡先 | 店長への個別連絡 |
締切は「20日まで」ではなく、日付と時刻まで書きます。 公開日と変更方法も先に決めておくと、希望回収から確定までの連絡がぶれません。
ステップ2:時間帯ごとの必要人数を決める
必要人数表には、人数だけでなく、欠かせない役割も書きます。
たとえば3人そろっていても、レジを開けられる人や締め作業ができる人がいなければ、その時間帯は成立しません。 必要人数と必要な役割は、別の列で確認します。
| 曜日 | 時間帯 | 必要人数 | 必要な役割 | 人数の理由 |
|---|---|---|---|---|
| 平日 | 11時から15時 | 3人 | レジ1人、キッチン1人 | ランチ対応 |
| 平日 | 15時から17時 | 2人 | キッチン1人 | 仕込みと休憩交代 |
| 平日 | 17時から22時 | 3人 | キッチン1人、締め1人 | ディナーと閉店作業 |
| 土日 | 11時から15時 | 4人 | レジ1人、キッチン1人 | 来店数が多い |
必要人数を決めきれない場合は、勘で固定しないほうが安全です。 過去のシフト、売上や来店の波、現場で足りなかった時間を見比べ、まず仮の人数を置きます。 シフト期間が終わったら、過不足を記録して次回に直します。
次の見出しをそのまま表へコピーすれば、必要人数表を作れます。
日付|曜日|時間帯|必要人数|必要な役割|人数の理由|実績メモ
「人数の理由」を残すと、翌月に数字だけが引き継がれるのを防げます。 イベント終了や営業時間変更で前提が変わったときも、直すべき枠を判断できます。
ステップ3:希望を同じ形式で集める
希望シフトでは、「入れる日」だけでなく「入れる時間」と「担当できる役割」を集めます。
全員からそろえる項目は次の5つです。
- 出勤できる日
- 出勤できる開始時刻と終了時刻
- 休み希望
- 早番、遅番などの勤務区分
- 担当できる役割と補足
空欄の意味も決めます。 空欄を「いつでも入れる」と解釈する人と「希望なし」と解釈する人がいると、確認が必要になるからです。
LINEやメールで集める場合は、次の文面をコピーして使えます。
【8月前半の希望シフト】 対象期間:8月1日から8月15日 提出締切:7月20日21時 「日付、入れる時間」の順で送ってください。 例:8月1日 11時から17時、8月2日 休み希望、8月3日 17時以降 空欄は「出勤できない」として扱います。 提出後の変更は、店長への個別連絡で知らせてください。
希望を集めるとき、休む理由まで必須にする必要はありません。 シフト作成に必要なのは、勤務できる日時と条件です。
希望表の形式から決めたい場合は、シフト希望表の作り方も使えます。
ステップ4:希望を枠ごとの候補者へ変換する
集まった希望は、人ごとの文章のまま読まず、1行に1人で整理します。
次は、ある平日の希望を整理した例です。
| スタッフ | 入れる時間 | 担当できる役割 | 固定条件 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 11時から15時 | レジ | 11時から勤務 |
| Bさん | 11時から17時 | ホール | なし |
| Cさん | 15時から22時 | ホール、締め | 締め担当可 |
| Dさん | 11時から17時 | キッチン | キッチン担当 |
| Eさん | 17時から22時 | キッチン | キッチン担当 |
| Fさん | 17時から22時 | ホール | なし |
この一覧から、時間帯ごとの候補者を作ります。
| 時間帯 | 必要人数 | 候補者 | 必要な役割を満たすか |
|---|---|---|---|
| 11時から15時 | 3人 | Aさん、Bさん、Dさん | レジ、キッチンともに可 |
| 15時から17時 | 2人 | Bさん、Cさん、Dさん | キッチン可 |
| 17時から22時 | 3人 | Cさん、Eさん、Fさん | キッチン、締めともに可 |
候補者に数えるのは、時間が合う人だけではありません。 その枠に必要な役割、本人の希望、雇用契約や店舗内ルールをすべて満たす人だけを数えます。
ステップ5:候補の余裕がない枠から割り当てる
どこから埋めるかは、候補の余裕数で決めます。
候補の余裕数 = その枠に入れる候補人数 − 必要人数
先ほどの例に当てはめると、次のようになります。
| 時間帯 | 候補人数 | 必要人数 | 余裕数 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 11時から15時 | 3人 | 3人 | 0 | 候補者全員が必要 |
| 15時から17時 | 3人 | 2人 | 1 | 1人だけ選択の余地あり |
| 17時から22時 | 3人 | 3人 | 0 | 候補者全員が必要 |
余裕数は、次の目安で使います。
- マイナス:並べ替えても埋まらない不足枠
- 0:候補者全員を入れないと成立しない枠
- 1:欠勤や希望変更で不足しやすい枠
- 2以上:ほかの枠との調整余地がある枠
最初にマイナスの枠を探します。 マイナスの枠は、シフト表の中で人を入れ替えても解決しません。 不足する曜日、時間、役割を特定し、その条件で追加募集や相談を行います。
「来週どこか入れませんか」ではなく、「8月3日17時から22時に、キッチンへ入れる人を1人探しています」と伝えます。
次に余裕数0、余裕数1の順で割り当てます。 候補が多い枠を先に埋めると、少ない枠で使える人を残せなくなるためです。
先ほどの例は、次のように仮組みできます。
| 時間帯 | 必要人数 | 割り当て | 役割 |
|---|---|---|---|
| 11時から15時 | 3人 | Aさん、Bさん、Dさん | Aさんがレジ、Dさんがキッチン |
| 15時から17時 | 2人 | Bさん、Dさん | Dさんがキッチン |
| 17時から22時 | 3人 | Cさん、Eさん、Fさん | Cさんが締め、Eさんがキッチン |
この例では、すべての時間帯で人数と役割を満たしています。 月全体を作るときも、1日ずつ完成させるのではなく、余裕数が少ない枠を全期間から先に埋めます。
不足枠が見つかったときの対処順
不足枠が見つかったら、担当者の頭の中だけで組み替え続けないようにします。 次の順番で、変更できる条件を確認します。
- その時間に入れるスタッフへ、不足枠を具体的に伝える
- 長い勤務枠を、運営上可能な範囲で短い枠に分ける
- 仕込み、清掃、発注など、ピーク外へ移せる作業を確認する
- 他店舗からの応援や責任者の配置など、社内ルールで使える手段を確認する
- 責任者が営業時間や提供方法を調整できる場合は、運営条件を見直す
休み希望を無視して名前を入れることは、不足の解消ではありません。 候補者が足りない枠は、作成担当者だけで解けない運営上の不足として扱います。
ステップ6:5回に分けて公開前チェックをする
仮シフトは、人数、個人条件、負担、店舗運営の順に確認します。 一度に全部を見るより、目的を分けたほうが見落としを減らせます。
1回目は人数と役割
- すべての時間帯で必要人数を満たしているか
- レジ、キッチン、開店、締めなどの役割がいるか
- 休憩に入った時間も必要人数を下回らないか
- 新人だけになる時間帯がないか
2回目はスタッフごとの条件
- 本人が提出した日時に収まっているか
- 雇用契約と店舗内の勤務ルールに合っているか
- 同じ時刻に別店舗や別業務を重ねていないか
- 遅番の直後に早番を置くなど、無理な並びになっていないか
3回目は労働時間、休憩、休日
労働時間は、店舗の慣習ではなく、法令、雇用契約、就業規則に照らして確認します。
厚生労働省が示す原則は、1日8時間、1週40時間までです。 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。 休日は、少なくとも毎週1日、または4週間で4日以上必要です。
変形労働時間制などを導入している場合は扱いが異なります。 自店の制度と就業規則を確認し、判断に迷う場合は労務担当者や専門家へ確認してください。 制度の原則は、厚生労働省「労働時間・休日」で確認できます。
4回目は負担の偏り
出勤回数だけをそろえても、負担が公平とは限りません。 土日、早番、遅番、締め、急な追加勤務を分けて数えます。
| スタッフ | 出勤回数 | 土日 | 遅番 | 締め | 通らなかった希望 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | 8回 | 2回 | 1回 | 0回 | 0件 |
| Bさん | 8回 | 4回 | 3回 | 2回 | 2件 |
この例では出勤回数は同じですが、Bさんへ土日と遅番が偏っています。 同じ人へ負担が続く場合は、次回の割り当て順に反映できるよう記録します。
公平な割り振りを詳しく整理したい場合は、シフトの偏り、不公平感をなくす組み方も参考になります。
5回目は総労働時間と人件費
最後に、スタッフごとの予定労働時間と、シフト全体の人件費見込みを確認します。 時給だけでなく、深夜、休日、役割など、自店の賃金ルールで加算される項目も含めます。
予算を超えている場合も、余裕数0の枠から人を外すと必要人数を割り込みます。 余裕数が大きい枠と、必要人数を決めた理由を見直し、店舗運営に影響が少ない枠から調整します。
公開前チェックリスト
公開ボタンを押す前、またはシフト表を送る前に、次の項目を上から確認します。
- 対象期間と日付、曜日が一致している
- 営業時間と店休日が正しい
- すべての枠で必要人数を満たしている
- 必要な役割を担当できる人がいる
- 休憩中も必要人数を下回らない
- 全員の希望提出内容と一致している
- 労働時間、休憩、休日を確認した
- 土日、早番、遅番、締めの偏りを確認した
- 総労働時間と人件費の見込みを確認した
- 新人だけになる時間帯がない
- 公開日時と変更連絡の方法を書いた
- スタッフが見る最新版を1つに決めた
チェックで問題が見つかったら、該当する枠だけを直します。 全体を最初から組み直す前に、余裕数が大きい枠の候補者と交換できるか確認してください。
ステップ7:確定シフトと変更方法を一緒に伝える
シフト表だけを送ると、スタッフは「どれが最新版か」「変更は誰に言うか」を判断できません。 対象期間、更新日時、最新版を見る場所、変更の連絡先を一緒に伝えます。
次の文面をコピーして使えます。
【8月前半のシフトを確定しました】 対象期間:8月1日から8月15日 更新日時:7月25日18時 最新のシフト表:共有URLまたは掲示場所 勤務日時を確認し、間違いがあれば7月27日までに店長へ個別に連絡してください。 確定後の変更は、店長とスタッフの双方で確認したあとにシフト表へ反映します。
一度確定した労働日や労働時間の変更は、基本的に労働条件の変更に当たり、使用者と労働者双方の合意が必要とされています。 通知期限、通知方法、変更の申出期限と手続をあらかじめ決めてください。 詳しくは、厚生労働省「いわゆるシフト制について」で確認できます。
変更が出たら上書きだけで終わらせない
確定後に変更が出たら、シフト表の修正と同時に変更履歴を残します。 古い画像や印刷物を見ている人がいても、変更の対象と連絡状況を追えるようにするためです。
| 更新日時 | 対象 | 変更前 | 変更後 | 双方の確認 | 連絡済み |
|---|---|---|---|---|---|
| 7月28日18時 | 8月3日ディナー | Bさん | Cさん | 済み | 済み |
変更後は、次の3か所をそろえます。
- 最新のシフト表
- 変更履歴
- 変更対象者への連絡
グループトークへ新しい画像を送るだけでは、古い画像も残ります。 スタッフが常に同じURLや掲示場所で最新版を確認できる形にすると、取り違えを減らせます。
次回のシフト作成に残す記録
シフト期間が終わったら、実際の過不足を必要人数表へ戻します。
| 日付と時間帯 | 計画 | 実際 | 次回の変更 |
|---|---|---|---|
| 金曜17時から19時 | 3人 | 注文が集中して不足 | 4人へ増やす |
| 月曜15時から17時 | 2人 | 1人でも対応できた | 作業量を再確認 |
| 土曜11時から15時 | 4人 | 新人2人で会計が滞った | レジ経験者を1人固定 |
実績メモがあれば、翌月は必要人数を決めるところからやり直さずに済みます。 人数だけでなく、「何が足りなかったか」を残してください。
今日のシフト作成で最初にやること
作業を始めるときは、表を4つ用意します。
- 必要人数表:日付、時間帯、必要人数、必要な役割、理由
- 希望一覧:スタッフ、入れる時間、役割、固定条件
- シフト表:必要人数、割り当て、役割、余裕数
- 変更履歴:更新日時、変更前、変更後、双方の確認、連絡状況
最初に必要人数表を作り、希望一覧と照合して余裕数を出します。 余裕数がマイナスの枠を調整し、0の枠から割り当てれば、誰から入れるかで迷いません。
シフト表は、人名を順番に当てはめて作るものではありません。 必要な枠と入れる候補を先に整理し、成立しにくい枠から決めると、やり直しの少ない表になります。




